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石ころコロコロ

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映画 二十日鼠と人間

近所にツタヤが出来たのが嬉しくて、さっそく立ち寄ってみたら
すっかり忘れかけていた映画を見つけました。
1992年のアメリカ映画「二十日鼠と人間」OF MICE AND MEN
スタインベックの同名小説の映画化です。
制作・監督はゲイリー・シニーズ。
ジョージ役も演じています。
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物語は・・・
1930年代の不況風に荒れるアメリカの農村地帯。
家も財産も愛する人もいない渡り労働者たちは、
希望もなくみんな孤独でした。
しかし、
レニーとジョージだけは違っていました。
大男で力持ち、でも知恵遅れのレニー。
小柄だけど、いつも冷静で知的なジョージ。
デニムのズボンとコンパクトに巻いた毛布を肩に掛けて、
凸凹コンビはいつも一緒に農場を転々と。
ふたりは固い友情の絆で結ばれていたのです。

とある農場でレニーが起こしたトラブルにより、
ふたりが追われるシーンから映画は始まります。
レニーさえいなければと思いながらもジョージは
いつも優しくレニーを庇ってきました。

新しい農場へ行く途中、川縁で野宿するシーンでの
ふたりの会話が心に沁みます。
たき火のあかりに照らされながら、レニーはあどけなく
ジョージに夢の話をしてほしいとせがみます。
「この前みたいに話をしてくれ」
「どんな?」
「ウサギの話だよ」
ジョージは「今は希望はないけど俺たちには未来がある。
それにお互い語り合う友を持っているんだ」
レニーは「おいらにはあんたがいるし、あんたにはおいらだ」と
キラキラ目を輝かせて答えます。
ジョージは、いつか小さな家と土地を持って牛や豚を
飼うのだと続けました。
そして広い野菜畑を作ってウサギ小屋を立てて
ウサギはおまえが世話をするんだと。
「おいら、いろんな色のウサギを飼いたいな」
レニーの表情は本当に嬉しそう。
ジョージはウサギが飼いたかったらトラブルは避けろ、
トラブルがあったらここの茂みに隠れろと言い聞かせます。
その無邪気さがやがて命取りになることをジョージは
予感していたのように。

新しい農場での老人と老犬のエピソードが泣けます。
仕事仲間は老いぼれて病気がちな犬の悪臭に耐えかね
老人に苦しまないで殺める方法を教えるのです。
そんな真似はできないと拒む老人に代わり
仲間のひとりが犬を処分してしまいます。
「犬の最期を他人に任せたのは間違いだった」と
後々悔やむ老人の姿が哀しいです。

新しい農場では力持ちのレニーは重宝がられ、
その様子を微笑みながら見守るジョージ。
この穏やかな日がずっと続きますようにと祈りたくなります。
でも、新たな出会いはまた次のトラブルの火種となりました。
望まない結婚生活に不満を抱く雇い主の息子の若妻です。

レニーは柔らかくて愛らしいものが大好き。
ぎゅっと抱きしめたいだけなのに、力の加減を知らないレニーは
大切なハツカネズミも子犬も死なせてしまいました。
馬屋の干し草の陰に死んだ子犬を隠そうをするジョージ。
それを雇い主の息子の若妻に見つかってしまいます。
ジョージからあの女には決して近づくなと厳しく
言われていました。
馬屋でふたりっきり、女はレニーに言います。
「あんた、頭がおかしいのね。でもいい人みたい。
柔らかいものを触りたい気持ちは分かるから
髪を触ってごらん」
レニーの大きな指が女の髪を撫で始めました。
が、レニーの指は次第に髪にくい込んで、
怯えて騒ぎ出す女を更に愛おしむように強く抱きしめて、
レニーは誤って女を死なせてしまうのです。

姿を消したレニー。
見つかればリンチを受け、殺されてしまいます。
男たちは銃を手にレニーを捕まえに行きました。
ジョージは約束通り川縁の茂みに隠れていたレニーを見つけます。
「おら、また困ったことやっちまった」
「いいんだよ、そんなこと」ジョージにレニーを責めることは
もう出来ませんでした。
レニーはまた何度も聞いたウサギの話をジョージにせがみます。
ジョージは「川の向こうを見てろ、まるで目に見えるみてえにな」
と言いながらレニーの後ろに回って夢の話をし始めました。
そしてレニーの表情が幸せに満ちた瞬間・・・銃声。
それは「犬」の時に聞いた苦しまない方法。
愛するがゆえに選んだ衝撃的な結末。
愛するものの死を他人の手に委ねたくなかったジョージ。
「老人と老犬」は「ジョージとレニー」そのもの。
悲劇なのにどこか「救い」が感じられたのは、
ジョージのレニーに対する深い愛が
全編にわたって感じられたからでしょう。
そうするしかなかったのです。

社会の底辺で生きる普通の幸せすら叶わない人達の悲哀。
ジョージ役のゲイリー・シニーズの鋭く哀しい眼差しと
レニー役のジョン・マルコビッチの絶妙な演技が光ります。
黄金色の農場を舞台に展開する切なくてやるせない物語。
レニーの無垢な笑顔がいつまでも心に残る素晴らしい映画でした。

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こちらは、スタインベックの原作です。(新潮文庫)
映画は原作にかなり忠実に描かれていると思いました。
映画の原作超えは難しいと言われますが
どちらも素晴らしい「二十日鼠と人間」でした。 


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by ishikoro-b | 2011-11-22 02:20 | 映画 | Comments(4)
Commented by キャリオ at 2011-11-22 22:09 x
アメリカもスタインベックの頃は心の機微を写した良い作品が多かったのですね。
社会は豊かになると病根が芽生えるのでしょうか。
Commented by ishikoro-b at 2011-11-23 22:54
キャリオさま。
「エデンの東」もそうでした。
名作が生まれる背景は、貧しいけれど
心の豊かな時代だったってことでしょうね。
Commented by ETCマンツーマン英会話 at 2011-12-06 16:04 x
Robert Burnsのファンです。二十日鼠と人間は、Bunrsの"To A Mouse"から引用されたことを知り、とても興味を持ちました。小説もぜひ読んでみたいと思います。
Commented by ishikoro-b at 2011-12-07 23:48
ETCマンツーマン英会話さま。
「To A Mouse」読ませていただきました。
200年も前に現代を暗示するような詩が
書かれていたのですね。
新潮文庫のあとがきにもロバート・バーンズの
ことが書いてありました。
タイトルの由来はは大切ですよね。
ちゃんと書くべきでした。
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