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東北紀行 花巻・高村山荘を訪ねて

乳頭温泉の余韻を楽しみながら2時間ほどで花巻へ。
もうすぐ今夜の宿、花巻温泉というあたりで
「高村山荘」の看板を見つけてしまいました。
高村光太郎と言えば「智恵子抄」に胸を熱くした
青春の頃をなつかしく思い出します。
まさかこんな所で高村光太郎に会えるなんて・・・

駐車場から高村山荘への小径が花巻の第一歩となりました。
風は冷たいけれど賢治と光太郎を育んだ空、
あこがれの花巻です。
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高村山荘はまるで宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の一節
「野原ノ松ノ林ノ陰ノ小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ」の
小屋のようでした。
1945年、光太郎は東京のアトリエ兼自宅を空襲で失い、
賢治の縁で花巻の賢治の弟・清六の家に疎開します。
しかし、清六の家も戦災で消失したため、
このわずか畳三畳半ほどの粗末な小屋に移り住み、
農耕自炊の孤独な生活を始めるのでした。
光太郎62歳の時のことです。
この暮らしは7年にも及びました。
亡き智恵子の幻を追いながら、
多くの戦争協力詩を作ったことを自省する日々。
愛と美の結晶というべき詩の傑作はこの小屋で
生み出されたのです。

山荘は二度に渡って套屋が建てられ、二重に保護されていて、
村人たちの光太郎を敬慕する気持ちが伝わってきました。
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入り口に掲げられた草野心平の書「無得殿」
稼ぎがないものの住処という意味でしょうか。
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良寛を彷彿させるような、あまりに慎ましい光太郎の生活。
厳しいけれど、豊かな自然の祝福に感謝の気持ちを
忘れなかったことも、作品から伺い知ることができます。
展示された写真の中に、賢治の両親が山荘を訪問した時の、
微笑ましい3ショットの写真もありました。
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再現された日時計。壁に刻んだ時刻を糸影が伝う事で
時間を知ったのでしょう。
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小屋の東にある厠。
扉の明かり取りの「光」は光太郎自ら彫ったもの。
電気はもちろん小さな窓しかなかった小屋での彫像制作は
諦めざるをえなかったようです。
自身の名前でもあり「光」こそ全ての源。
「光」への思いが痛いほど伝わってきました。
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小屋の前の光太郎が耕した畑。
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この小屋で詠まれた詩「案内」の
光太郎の智恵子への愛が胸を打ちます。
智恵子の死から10年、光太郎66歳の時の詩です。

  「案内」

 三畳あれば寝られますね。
 これが小屋。
 これが井戸。
 山の水は山の空気のように美味。
 あの畑が三畝、
 今はキャベツの全盛です。
 ここの疎林がヤツカの並木で、
 小屋のまわりは栗と松。
 坂を登るとここが見晴らし、
 展望二十里南にひらけて
 左が北上山系、
 右が奥羽国境山脈、
 まん中の平野を北上川が縦に流れて、
 あの霞んでいる突き当りの辺が
 金華山沖ということでせう。
 智恵さん気に入りましたか、好きですか。
 後ろの山つづきが毒が森。
 そこにはカモシカも来るし熊も出ます。
 智恵さん こういうところ好きでせう。

泉の落葉は、智恵子のちぎり絵のようでした。
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高村山荘から、光太郎のゆかりの品々や作品が展示されている
高村記念館への道。
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途中にあった「雪白く積めり」の詩碑。
山小屋で最初に詠まれた詩。これもいい詩でした。
冬の詩人、高村光太郎なのですね。
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高村光太郎の詩といえば、教科書にあった「道程」と
「智恵子抄」の一部くらいしか記憶にありませんでした。
旅から帰って読み返してみたら、なんと哀しく美しい。
「レモン哀歌」は賢治の「永訣の朝」と同様、
涙なしには読めませんでした。
詩の意味がよく理解できなかった若い頃。
年を重ねた今だからこそ、新たな発見に胸がときめきます。

宮沢賢治の才能を認め、世に紹介した高村光太郎。
私たちの旅も、光太郎が賢治の世界へ
誘ってくれているような気がしました。
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by ishikoro-b | 2011-12-10 14:49 | 秋の旅 | Comments(2)
Commented by キャリオ at 2011-12-11 00:26 x
秋田には高村光太郎の山荘があるのですね。
高村光太郎の好きな詩に「冬ヶ来た」があります。
昔、苦しい時にはよく口ずさみました。

きっぱりと冬が来た
八つ手の白い花も消え
公孫樹の木も箒(ほうき)になった
 
きりきりともみ込むような冬が来た
人にいやがられる冬
草木に背かれ、虫類に逃げられる冬が来た
 
冬よ
僕に来い、僕に来い
僕は冬の力、冬は僕の餌食だ
 
しみ透れ、つきぬけ
火事を出せ、雪で埋めろ
刃物のような冬が来た
Commented by ishikoro-b at 2011-12-12 00:39
キャリオさま。
光太郎の冬の詩は清々しくて元気が出ますね。
山荘は岩手県の花巻にあるんですよ。

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