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石ころコロコロ

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映画 潜水服は蝶の夢を見る

BSプレミアムで、先日放送された映画
「潜水服は蝶の夢を見る」を観ました。
公開時に映画館で観て、強く印象に残った映画でした。
タイトルもいいですね。
自伝小説の映画化というのが凄いです。
オープニングの水墨画を思わせるレントゲンフィルムの
使い方からして、抜群の映像センスに心奪われたのでした。
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主人公の名はジャン=ドミニク・ボビー、42才。
ファッション誌「ELLE」の編集長。
妻と3人の子供がいて、愛人もいて、仕事も充実。
華やかな世界で自由気ままに
人生を謳歌していたジャン・ドーでしたが
ある日、目覚めたのは病院のベッドでした。

ぼやけた世界、目の前を行き来し覗き込む白衣の人。
ジャン・ドーは自分が脳卒中で倒れ
3週間も昏睡状態だったことを告げられるのです。
医師の話しかける言葉は聴こえるけれど
自分の言葉は声にならない。
全身の運動機能を失って、残されたのは聴覚と視覚。
もちろん思考能力も知性も感性もありますが
意思表示できるのは、唯一動かせる左の目だけでした。

カメラをジャン・ドーの左目に据えた演出も冴えています。
涙でレンズが曇ったりするのです。
斜めに揺らぐアングルなど、彼の置かれている境遇を
疑似体験しているかのようでした。
現在のシーンも然ることながら
思い出のシーンや想像の世界のシーンの美しさといったら・・・
病室のグリーンの壁、ブルーのシーツ。バラの花。
窓から差し込む光、風に揺れるカーテン。
海が見える病院のテラス。
病院の廊下が宮殿のように変わり、ニジンスキーが
高く軽やかに跳躍するシーンなど
本当にすべてが美しく官能的でさえあります。
ジャン・ドーの素晴らしい想像力を映像の中に昇華させた
シュナーベルの美意識とカミンスキーのカメラワークに
ただただ、酔いしれるのでした。

そしてジャン・ドーの回りの女性のみんな美人なこと。
彼は幸せものです。
ジャン・ドーは美人の言語療法士の協力によって
目の瞬きによって意思を伝える方法を会得するのでした。
それは、何度もアルファベットが読み上げられ
その文字のたびに瞬きを繰り返すというもの。
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ジャン・ドーの最初の言葉は「死にたい」でした。

自分の体は、重い潜水服を着て海の底に沈むようなもの。
闇に響く鼓動と呼吸音が、より不安を募らせるのでした。
バッハのアリオーソと共に氷河が崩れる映像も象徴的です。
「自分の本質を悟るのに、こんな不幸が必要なのか」

左目の他にマヒしていないもの・・・それは想像力と記憶。
蛾が蝶に羽化して花野を舞う映像が心を揺さぶります。
ジャン・ドーは想像力と記憶で、重い潜水服を脱ぎ捨て
蝶のように自由に羽ばたくことを夢見るのでした。
「何でも想像できる、時空も超えられる。これが僕だ」

ジャン・ドーは左目の瞬きのみで、自伝を書くことを決意。
それは編集者の献身的な協力とともに
気の遠くなるような根気のいる作業でした。
最後の力を振り絞るジャン・ドー。
何と、20万回の瞬きで自伝小説を書き上げるのでした。

崩れ去った氷河がエンディングで巻き戻される映像も
再生を示唆しているかのようで圧巻。
映画ならではの芸術性を感じました。

最後まで諦めることなく、自分自身を懸命に生ききることで
「人間であること」の尊厳を貫き通したジャン・ドー。 
極限の境遇にあっても、希望の光を放つことができるのだと
教えてくれた、素晴らしい映画でした。

デカルトの「我思う、故に我あり」とはこのことですね。

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監督: ジュリアン・シュナーベル
撮影: ヤヌス・カミンスキー
製作年/国: 2007年 フランス/アメリカ  
原題: LE SCAPHANDRE ET LE PAPILLON 
出演:マチュー・アマルリック
   エマニュエル・セニエ
   マリ=ジョゼ・クローズ
   アンヌ・コンシニ
   マックス・フォン・シドー
   マリナ・ハンズ
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by ishikoro-b | 2012-10-05 00:26 | 映画 | Comments(0)
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