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石ころコロコロ

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映画 ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日

イギリスの文学賞ブッカー賞を受賞した、ヤン・マーテルの
ベストセラー小説「パイの物語」の映画化です。
3D映像で鑑賞しました。

ネタばれ注意!

まずは、動物園の動物たちを背景に現れる
オープニング・クレジットの活字書体の美しさにウットリ。
よく見るとアルファベットの一部が
風でふわ〜っと揺らいだりしているのです。
そんな細部にこだわった演出・・・いい映画に違いありません。
「ブロークバック・マウンテン」のアン・リー監督ですもの。
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カナダ人の若い作家は新作小説のネタを探して
インドを旅していました。
偶然知り合ったママジという老人は
「あんたが神を信じたくなるような話を知っているよ」と
今はカナダで暮らすインド人の中年男性、パイ・パテルを
紹介するのでした。
ママジはパイ・パテルの叔父さんだったのです。

カナダへ帰って、パイ・パテルを訪ねた作家は
パイの少年時代の驚愕の体験を聞く事になるのでした。
パイは「パイ」という不思議な名前の由来から
語り始めるのです。

パイの本名はピシン。
ママジ叔父さんが、大好きなパリのプールから名付けました。
しかしインドでは単語に「尿」という意味が含まれていて
学校でイジメを受けることになるのです。
そこで彼は名前を「パイ」に改名。
名前の由来が円周率のπであることを知らしめるため
黒板に円周率の数字を延々と書き綴っては
周囲を驚かせるのでした。

幼い頃のエピソードに、宇宙や生命の神秘を感じさせる
数学的で、宗教的で、哲学的な伏線が散りばめられていて
それがやがて、パイの世界感に繋がっていくのです。

インドで動物園を経営していたパテル一家は
市から援助を打ち切られたことで経営状態が悪化。
家族でカナダへの移住を決意するのです。
16歳のパイは、両親と兄、そして動物たちと共に
日本の貨物船でインドを後にするのでした。

ところがある夜、貨物船はマリアナ海溝で嵐に見舞われ沈没。
家族を救う間もなく、パイだけが救命ボートに逃れることができ
一命を取り留めるのでした。
その小さなボート「パイの箱船」には、怪我をしたシマウマ
子供を失ったオランウータン、お腹をすかせたハイエナ
ベンガルトラの「リチャード・パーカー」も
乗り合わせることになるのです。
そして「パイの箱船」で繰り広げられる弱肉強食のルール。

生き残った、パイとトラの「リチャード・パーカー」の
227日間に及ぶ過酷なサバイバル生活が始まるのでした。
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救命ボートに備えてあった非常食と水でパイは飢えを凌ぎます。
そして遭難した時のためのマニュアル本もあって
パイは簡易筏を作ったり、生きるために必要なことを
前向きにこなしていくのでした。
一番大事なことは、獰猛なトラ「リチャード・パーカー」のこと。
逃げ場のない状況で、トラと共存するしか選択肢はないのです。
トラに占領されたボートに簡易筏を結び付けて、パイは避難。
距離を保ちながら、果てしない海を彷徨うのでした。

トラの餌食とならないためには、トラを飢えさせないこと。
網に架かった魚の頭を何度も叩いて、殺生するパイ。
泣き叫びながら、神様に謝り、感謝するのでした。
生きることは他のいのちを奪うこと。
シンプルな行為が、深く胸に突き刺さりました。
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嵐が去った静かな海は、奇跡のような美しさに満ちていました。
空を映す鏡のような海面、満月と満天の星々
怪しく光る発光クラゲ、夜光虫の幻想的な光
ダイナミックなクジラのジャンプ
トビウオやイルカの大群・・・
3D映像ならではの迫力と圧倒的な映像美が自然の神秘を
再現し、海を超えて宇宙空間を漂っているかのようでした。

遭難を知らせるメモ書きを入れた缶が
海に投げられた瞬間、広がっていく円の波紋・・・
円周率は無限に続く数字。
尊い命もまた無限に続くことを示唆しているような
息を呑むほど美しいシーンに感動しました。
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私はふと空海の修行ことを思いだしました。
室戸の洞窟から見えたものは空と海。
悟りを得た時、真言を唱える口の中に
明星が飛び込んだといいます。
究極の体験をしたものだけが遭遇できる大自然の神秘。
観る者もパイと一緒になって、神様の祝福を受け
生きている歓びを実感するのでした。

餌付けしながら次第に「リチャード・パーカー」との
距離を縮めていくパイ。
しかし、トラはあくまで猛獣。友だちではありません。
それは子供の頃、父から厳しく教えられた事。
いつ襲ってくるかもわからない緊張感が、映画を引き締めます。
そして終盤、棲む世界の違うもの同士の潔い別れ方も
好感がもてるのです。
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パイの逞しい精神力と生きる勇気・・・
なにより「リチャード・パーカー」がいたから
パイは生き延びることができました。

事故原因を調べに来た日本人は、パイの話を疑います。
そこで語られるアナザーストーリー。
「君はどっちが好きだい?」とライターに聞くパイ。
「トラの方が好きです」と作家。
そして小説「パイの物語」が生まれるのでした。

家族を失った悲しみ浸る間もなく始まった怒濤の漂流生活。
最後にパイは作家に言います。
人生は切ない。
残念だったのは、最後のお別れできなかった事だと・・・
パイの頬を濡らす涙が印象的でした。

それにしても、最先端のデジタル技術で作り出された
ベンガルトラが凄い。超リアルです。
本年度アカデミー賞主要11部門ノミネート作品。
これから鑑賞しようと思われている方は、是非3Dで。

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監督 : アン・リー
原題 : Life of Pi
原作 : ヤン・マーテル
製作年/国 : 2012年 アメリカ  
出演: スラージ・シャルマ/パイ・パテル(少年)
    イルファン・カーン/パイ・パテル(成人)
    レイフ・スポール/カナダ人作家
    ジェラール・ドパルデュー/コック
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by ishikoro-b | 2013-01-30 01:46 | 映画 | Comments(2)
Commented by キャリオ at 2013-02-01 22:34 x
トラとの漂流とは不思議な設定ですね。
緊張感の連続の中で生きるのは大変なことでしょうね。
今の世の中に緊張感がなくなっているのが怖いことです。
Commented by ishikoro-b at 2013-02-03 16:54
キャリオさま。
緊張感や適度なストレスも生きる力に
繋がるのでしょうね。
素晴らしい映画でした。
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