映画 ヤコブへの手紙

フィンランド映画「ヤコブへの手紙」をDVDで鑑賞しました。
湖のほとり、白樺林に囲まれた牧師館を舞台に繰り広げられる
一遍の詩のような美しい物語。魂が浄化される・・・
そんな言葉がふさわしい珠玉の作品でした。

ネタばれ注意!
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殺人罪で終身刑のレイラが恩赦により
釈放されるところから映画は始まります。
12年の服役中、休暇の申請はおろか
たったひとりの姉との面会も頑に拒んできたレイラ。
何も信じない、誰も頼らない・・・
終身刑を全うしようと心を閉ざした頑な決意が
彼女の顔の表情さえ奪っていました。

釈放されても行く宛ないレイラに、刑務官は手紙を取り出し
片田舎の教会のヤコブ牧師が身の回りの世話をする人を
探していると勧めるのでした。
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バスが停まりひとり下り立つレイラ。
古い粗末な牧師館で待っていたのは盲目の老牧師ヤコブでした。
よく来てくれましたね、と握手を求めるヤコブ。
神の存在を否定するかのようにレイラはそれを拒むのです。

白樺の並木道を郵便配達員が自転車でやってきます。
悩める人達からの手紙がヤコブ牧師に届くのでした。
レイラの仕事は、盲目のヤコブに手紙を読んで
ヤコブの祈りの言葉を代筆すること。
ヤコブのベッドの下には悲しみがいっぱい詰まった手紙が
山のように積み上げられていました。
人は誰しも神が自分を見ていてくれると思いたいもの
それを実感したいのです、とヤコブは言うのです。
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しかし、自分の仕事に意味を見いだせず、退屈極まりないレイラは
届けられた手紙の半分を汚水槽に捨てたりするのでした。

ある夜、牧師館に忍び込んだ男をレイラが取り押さえると
それは郵便配達員でした。
彼は牧師が殺されていないか確かめに来たと言うのです。
彼は善人だ、早く刑務所へ戻れと叫んで
逃げるように去って行くのでした。

それからというもの、郵便配達員の姿は見えるけれど
レイラの姿を見つけると道を逸らして消えてしまうのでした。
そして、とうとう手紙が届かなくなってしまうのです。
手紙は本当に来なくなったのか。
郵便配達員がヤコブを失望させないために
夜中にヤコブのベッドの下から手紙を盗んで配達していたが
レイラに見つかって配達出来なくなったからか。
そのあたりは最後まで謎なのですが・・・

それでも手紙を待ち続けるヤコブに
それが何だっていうの?と突き放すレイラ。

ヤコブの失意は見ている者も胸が張り裂けそうになります。
届く手紙で、救われていたのはヤコブの方だったのです。
彼もまた悲しい試練と深い孤独を抱えて生きていたのでした。
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婚礼があると(幻覚)出掛けた教会には新郎新婦も誰も
いませんでした。ヤコブに付き添って行ったレイラは
ヤコブを教会へ置き去りにするのです。
ひとり残されたヤコブは死を決意
聖水で薬を飲み教会の床に身を横たえるのでした。

レイラは牧師館を出て行こうと荷物をまとめタクシーを呼びます。
レイラが最後にベッドを整えるさり気ないシーンが好きです。
彼女の本当の姿を垣間見せる監督の細やかな演出が冴えています。
どちらへ?・・・タクシーの後座席で言葉を失うレイラ。
タクシーのワイパー越しに映し出される
行く宛のないレイラの表情が心を揺さぶるのでした。
そして牧師館に残りレイラもまた死を決意した、その時・・・
まだこの家にいてくれたのか、とヤコブが帰って来るのでした。

人は誰かに必要とされているからこそ
生きる意味を見いだせるのです。
世の中から必要とされないヤコブとレイラに
光のようにやさしく降り注ぐショパンのノクターンと
ベートーベンのメヌエットが美しい。
ふたりだけのお茶のシーンも大切な儀式のようです。

レイラは少しづつ、変わり始めるのでした。
排水溝に捨てた手紙を拾おうとします。
郵便配達員に手紙がなくても家に来て声をかけてと頼むのです。
しかし手紙は届くことはありませんでした。

ヤコブのためにレイラのとった最後の手段は・・・
手紙の封をやぶるように雑誌のページをやぶり
ヤコブのために、自分の封印してきた過去を
語り始めるのでした。
親愛なるヤコブ牧師さま・・・と。

私は許されますか?と聞くレイラに
ヤコブ牧師は束ねられた手紙を渡すのでした。
それはレイラの姉からのものでした。
自分のことを心から心配してくれている人がいる・・・
レイラの頑な心が解き放たれ、涙が溢れるのでした。

紅茶を入れてこよう、と立ち上がりよろけるヤコブに
思わず手を差し出すレイラ。
人のぬくもりをふたりが初めて感じ合うシーンに
熱いものが込み上げてきました。

フィンランドの森を満たす透明な空気に包まれて
私の人生もまた肯定されたかのような深い感動がありました。
誰かを必要とし、必要とされることの素晴らしさ。
誰の役にも立たない人なんていないはずです。
主要な登場人物はわずか3人。75分という短い時間に
宗教を超えた人間の普遍のテーマが
静かに気高く描かれた素晴らしい映画でした。

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監督・脚本 : クラウス・ハロ
原題 : Postia Pappi Jaakobille
原案 : ヤーナ・マッコネン
製作年/国 : 2009年 フィンランド 
出演: カーリナ・ハザード/レイラ
    ヘイッキ・ノウシアイネン/ヤコブ
    ユッカ・ケイノネン/郵便配達員
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by ishikoro-b | 2013-03-15 21:54 | 映画 | Comments(0)
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