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石ころコロコロ

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映画 イル・ポスティーノ

キラキラ光る夏の海がみたい・・・
外出は暑いので、我が家のDVD_BOXから
そんな海が舞台の映画を探しました。
1994年のイタリア映画「イル・ポスティーノ」です。
ネタバレ注意!
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舞台は第二次大戦直後のイタリア、ナポリの沖合いの小さな島。
漁師の息子マリオは、ひ弱でうだつの上がらない男でした。
父の仕事を継ぎたくないマリオがようやく見つけたのは
臨時の郵便配達の仕事。
と言っても、字の読める人はほとんどいない島。
唯一の配達先は、パブロ・ネルーダの家でした。

三大パブロ・・・学校でたしか習いました。
パブロ・ピカソ パブロ・カザルス パブロ・ネルーダ
画家、チェリスト、詩人、それぞれジャンルは違うけれど
共通しているのはみんなファシズムと闘った人。
パブロ・ネルーダを演じるのが、フィリップ・ノワレ。
「ニュー・シネマ・パラダイス」のアルフレード小父さんと
いうのが嬉しいです。

チリの外交官でもあり偉大な詩人パブロ・ネルーダは
共産主義思想のため祖国を追放されてイタリアに亡命。
妻と共にマリオの住むの小さな島に身を寄せることになります。
マリオはローマに到着したネルーダがインテリや女性ファンから
熱烈歓迎されているニュース映画を見て
ネルーダの絶大な人気を知るのでした。
そして世界中から届くパブロ宛のファンレターを
届けることに誇りを感じるようになるのでした。

字は読み書きできるものの、詩など生まれてこのかた
縁のなかった無学なマリオ。
彼は愛の詩人でもあるネルーダの詩集を買って
サインをもらい、女性にもてるための小道具に使おうと
最初は不純な動機でネルーダに近づくのでした。
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ある日、ネルーダの家で何か言いたげに佇むマリオは
覚えたてのネルーダの詩を浴びせかけます。
最初は素っ気ないネルーダでしたが、マリオが「隠喩」という
聞き慣れない言葉に興味を示したところから
詩を介して、ふたりの交流が始まるのでした。
ネルーダから「隠喩」という、世界を何かに例える言い方が
あることを教わったマリオ。
マリオは詩を書きたいと思い始め、ネルーダもまた
マリオの中に眠っている詩人としての感性を見抜くのでした。

「世界にあるすべてが何かの隠喩なのですか?」
世界を表現する言葉を知ったマリオはネルーダに
臆面もなく尋ねます。
鋭い質問にたじたじのノーベル文学賞候補作家が
「明日答える」とそそくさと逃げるところが笑えます。
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マリオは島一番の美女ベアトリーチェに心奪われていました。
ベアトリーチェも小さなゲーム用のサッカーボールの球を
悩ましく口に含んだりしてマリオを誘惑するのでした。
満月の夜の打ち寄せる波音を聴きながら
窓辺で詩作にふけるマリオ。
誘惑の白い小さな球を月にかざすシーンの
マリオはすっかり詩人の佇まいです。
ノートにベアトリーチェへの思いを綴ろうとしますが
書けたのはその球の形、丸だけでした。
しかし、その丸の完璧な美しさ・・・詩になっているのです。
シンプルな丸の中に世界の美しいものすべてが
込められて、観る者の心を満たすのでした。
白い球を「詩」の象徴として使う演出の心憎いこと・・・

なかなか詩が書けないマリオは、ネルーダの詩を無断で
ベアトリーチェに捧げます。
ロマンチックな言葉に魅了されたベアトリーチェ。
ふたりは恋に落ちるのでした。
「盗作を許した覚えはない」とネルーダはマリオを責めますが
マリオは言います。「詩は、それを必要とする人のものだ」と。
詩は読む人の心に届いて普遍のものとなるのです。
オドオドしながらも正論を述べるマリオの言葉こそ
芸術の本質をついていてネルーダはまた、感服するのでした。

ネルーダ夫妻の仲介でやがてふたりは結婚。
そのパーティーの席にチリから逮捕命令が解かれた知らせが・・・
ネルーダは祖国へ帰ることになるのでした。

手紙を書くと約束してくれたネルーダ。
しかし、なかなか手紙は届きませんでした。
やがて、マリオは気付くのです。
「いいものは全部先生が持って行ったと思っていたけれど
残してくれたものがあった」と。

マリオは、ネルーダが残したテープレコーダーを持ち出し、
島の美しいものを録音しネルーダに捧げようとするのでした。
このクライマックスシーンは何度観ても胸がいっぱいになります。

島に打ち寄せる波や風の音や教会の鐘
星空の静寂にまでマイクを向けるマリオ。
「父さんの悲しい網」というのもジーンときます。
そして最後はベアトリーチェのお腹に宿る我が子の心拍音・・・
言葉ではうまく表せなくても、これこそがマリオの詩。
美しい宇宙の秩序、自然の摂理、人の営み・・・
ありふれた世界に命が吹き込まれ、輝きを放っていきます。
言葉やテクニックを超えて、生きて感じる世界こそ「詩」なのだと
言っているかのように。

マリオはネルーダとの交流を通じてコミュニズムにも
目覚めていきます。
ネルーダによって、世界の見え方が変わったマリオ。
そのことが悲しい結末にも繋がっていくのですが・・・

ネルーダが再び島を訪れたときには、マリオはいませんでした。
浜辺でひとり、マリオを偲ぶネルーダの姿が切ないです。
輝く海も潮風も・・・マリオの「詩」そのものでした。

マリオ役を演じたマッシモ・トロイージは
この映画の完成直後に41歳の若さで亡くなったのだそうです。
アメリカで受ける予定の心臓移植手術を延期して
長年の夢だった本作の撮影に賭けたのだとか。
映画のラストと重なって、涙が溢れます。
マッシモ・トロイージが配達してくれた手紙が
映画という美しい詩になって観る者の心に届いたのでした。

地味だけど、この映画に出会えてよかった・・・
イル・ポスティーノ・・・素晴らしい映画です。

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監督 : マイケル・ラドフォード
原題 : IL POSTINO
原作 : アントニオ・スカルメタ
製作年/国 : 1994年 イタリア・フランス 
出演 : マッシモ・トロイージ/マリオ
    フィリップ・ノワレ/パブロ・ネルーダ
    マリア・グラツィア・クチノッタ/ベアトリーチェ
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by ishikoro-b | 2013-08-13 00:10 | 映画 | Comments(2)
Commented by キャリオ at 2013-08-13 15:04 x
毎日暑い日が続きますが、こんな時は部屋でビデオを鑑賞するのが一番かもしれません。
イタリアナポリの小さな港町でのネルーダとマリオのストーリーは詩的で面白そうですね。
マリオとベアトリーチェの恋はどうなるのでしょうか。
マリオがなくなって、悲恋に終わるのですね。
Commented by ishikoro-b at 2013-08-19 00:39
キャリオさま。
留守していて失礼しました。
暑い日はクーラーの効いた部屋で映画がいいですね。
悲しい結末もまた、生きるって素晴らしいと
思わせてくれる映画でしたよ。
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