お正月は映画大好き友人のおすすめの一本
ベルナルト・ベルトルッチ監督の1998年の作品 「シャンドライの恋」をDVDで観ました。 アフリカ人難民の女性を愛してしまったイギリス人ピアニストの 無償の愛の物語です。 巨匠ベルトルッチ監督といえば大作のイメージですが この映画はベルトルッチ監督の小粋な小品といった感じ。 映像も音楽も素晴らしい、シンプルな構成の中に ベルトルッチの精神世界と美学を堪能することができました。 ネタバレ注意! アフリカのある国でのこと。 シャンドライの夫、教師のウィンストンは民主運動をして 軍事政権に逮捕され刑務所に入れられてしまいました。 夫を残して、しかたなくローマに亡命したシャンドライは イギリス人ピアニスト、キンスキーの屋敷で住み込みの家政婦を しながら医学の勉強をしています。 アフリカのポップミュジックを聴きながらひたむきに家事をこなす シャンドライの艶やかな褐色の肌、笑顔や仕草のキュートなこと。 アフリカの大地に咲く花のように美しくて魅力的です。 孤独で内気なイギリス人ピアニスト、キンスキーは 時折、子どもたちにピアノを教えることがあるものの 伯母から譲り受けた古い屋敷でほとんど外出することもなく 一日ピアノを弾いて暮らしていました。 そんな彼はいつしかシャンドライを愛するようになるのです。 彼の弾くピアノはシャンドライに思いを告げるものでしたが・・・ 階下から聴こえるアフリカンミュージックと階上のクラシックピアノ。 交わることの難しい人種や文化、そして立場・・・ それらを見事に融合させていく映像と音楽。 ふたりがこころを通わせていく瀟洒な螺旋階段や エレベーター式クローゼットの使い方など 心憎い演出が全編に散りばめてあります。 そのクローゼットの中にあったキンスキーからの指輪のプレゼント。 彼女にとってキンスキーはあくまで屋敷のご主人。 「あなたがわからない、あなたの音楽も・・・」と 彼の行為に戸惑い、怒りをぶつけるシャンドライ。 不器用に唐突に彼女を抱きしめようとするキンスキー。 「愛している。君のためなら何だってする」と求婚を迫る彼に シャンドライは「だったら、刑務所から夫を出して!」と返すのでした。 キンスキーはシャンドライの夫の存在に愕然とするものの シャンドライの夫を救い出すことを決意。 屋敷の美術品の数々を釈放資金に替えていくのでした。 愛するということはその人を幸せにすること。 所有することではないのです。だから切ない! キンスキーは生まれてはじめて人を愛する喜びを知ったのでした。 キンスキーの部屋から美術品や装飾品が次々消えていくにつれて 彼の作り出す音楽も変っていきます。 躍動的なアフリカっぽいリズムを取り入れた曲は クラシックを拒否してきたシャンドライの心と体を揺さぶるのでした。 そんなある日、夫ウィンストンの無事の知らせが届いて シャンドライはキンスキーの献身的な愛にやっと気付くのでした。 そして彼女もまたキンスキーを愛し始めるのです。 最も大切なピアノまで手放そうとするキンスキー。 教え子たちを招いて開いた最後のミニコンサートの小曲は シャンドライに捧げる曲でした。 しかし、その最中シャンドライは夫から日曜の早朝に ローマに着くという手紙を受け取るのです。 夫に会える喜びと、キンスキーへの愛で動揺するシャンドライ。 キンスキーを傷つけると分かっていながらも 夫を数日階下に泊めてもいいかと聞くシャンドライ。 キンスキーは一瞬ひるみながらも優しく受け入れるのでした。 クレーンで運び出されるグランドピアノに空のブルーが 写り込むシーンも見逃せません。 それと同じブルーのTシャツでキンスキーに感謝の手紙を したためるシャンドライ。 「thank you thank you thank you・・・」が やがて「I LOVE YOU」に変ります。 黒人神父と祝福の乾杯をするキンスキー。 この神父が陰で力を尽くしてくれていたのです。 なぜ人前でピアノを弾かないのかと尋ねる神父に 「それほどの才能がないからだ」と答えるキンスキー。 愛する人の心に届かなかった音楽は 他の人の心にも届かないと悟ったかのように 寂しげに酔いつぶれるキンスキーの姿が切ないです。 夫が戻る前の晩、シャンドライは「I LOVE YOU」の 手紙を持ってを酔いつぶれて眠るキンスキーの部屋へ行き 一夜を共にするのでした。 夜明けのローマの街に一台のタクシーがやって来ます。 玄関のベルが鳴って、ふたりを現実に引き戻すのでした。 そしてキンスキーの腕を振り払うようにシャンドライは 起き上がって・・・ 最後はどうなるのか、判断は観るものにゆだねられます。 ピアノが無くなった家にはもうキンスキーの居場所はないはず。 最後の夜の温もりを胸に、愛する人にすべてを捧げて 悔いることなくキンスキーは屋敷を去るつもりなのでしょう。 「自分の命を守ろうとする者は結局はそれを失い 命を失う者は結局は救われる」 キンスキーがアフリカのことを理解するために立ち寄った アフリカ系教会の黒人神父の言葉が頭をよぎります。 これがこの映画のテーマなのでしょうね。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督 : ベルナルド・ベルトルッチ 脚本 : ベルナルド・ベルトルッチ クレア・ペプロー 原題 : Besieged 原作 : ジェームス・ラスタン 製作年/国 : 1998年 イタリア 出演 : デヴィッド・シューリス/キンスキー タンディー・ニュートン/シャンドライ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ☆ ☆ ☆ ランキングの応援に駆けつけてくれた ブログ「猫日和。キルト日和。」でおなじみのふーくん。 ふーくんバナーをクリックすると きっとあなたにもいいことが・・・ 応援ありがとうございます。
by ishikoro-b
| 2014-01-11 23:00
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