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石ころコロコロ

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映画 鉄くず拾いの物語

スタイリッシュな映像や音楽、ドラマチックな展開や
気の利いた会話がなくても
深く心に余韻を残す映画があります。
ダニス・タノヴィッチ監督の新作「鉄くず拾いの物語」は
宝石の原石のような輝きを放つ作品でした。

ネタバレ注意!
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舞台はボスニア・ヘルツェゴビナの貧しい寒村。
そこに暮らすロマの家族に起きた出来事が
ドキュメンタリータッチで描かれます。
鉄くず拾いをしながら何とか生計を立てるナジフには
妻セナダとふたりの幼い娘がいました。
妻セナダは3人目を妊娠中で、一家は貧しいながらも
幸せな毎日を送っていました。

ある日、妻セナダを激しい腹痛が襲うのです。
それは流産で、すぐに手術をしないと
命の危険もあると診断されるのでした。
保険証がないため多額の医療費がかかると言われたナジフ。
何とか助けてほしいと懇願するも病院側はそれを
拒否するのでした。
貧しい者へ社会はいつも冷淡なのです。
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病院への途中、車窓から見えるのは巨大な発電所の煙突から
モクモクと立ち上る白煙・・・
繁栄の象徴と社会の底辺に取り残された人々の悲哀が
交差するシーンが印象に残ります。

なぜ神は、貧しいものばかり苦しめるのだ・・・
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家族を守るために奔走するナジフ。
死にものぐるいで鉄くずを拾い集めたり
ロマ族の救済団体に救いを求めたり
今できることをただ淡々と・・・
どんな社会の理不尽にもナジフは決して文句を
言ったり叫んだりしないのです。
しかし、決してあきらめない。
その姿に人間のたくましさ、美しさ、生きることの尊厳を
見たような気がしました。
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村の仲間は助けようにも皆同じように貧しくて
それでも彼らも出来ることを惜しまないのでした。
助け合わないと生きていけない・・・
奇跡なんか起らない・・・けれど
些細な言葉や援助がちゃんと人の心を繋いでいくのです。

やがて妻セナダは手術を受けて一命をとりとめるのでした。
最後、電気料金滞納で電気が止められた家に灯りがついて
テレビも映って子供たちも嬉しそう。
お金はないけれどナジフ一家にまた幸せな日常が
戻ってきたのでした。

ナジフのリアルな演技、その存在感・・・
凄い俳優さんだなあ、と思って見ていたのですが
それもそのはず、この物語はナジフ一家に起った実話。
この出来事の当事者が演じていると後で知って驚きました。
昨年のベルリン国際映画祭では見事三冠に輝き
ナジフは演技経験がないにも関わらず銀熊賞、主演男優賞を
受賞しました。
この賞をきっかけにナジフは保険証と定職を手に入れたのだとか。
こんな地味な映画に賞賛を惜しまないベルリン国際映画祭。
映画の未来が明るく思えた一瞬でした。

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監督・脚本 : ダニス・タノヴィッチ
原題 : 「EPIZODA U ZIVOTU BERACA ZELJEZA」
製作年/国 : 2013年 
      ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、仏、スロベニア
出演: セナダ・アリマノヴィッチ
    ナジフ・ムジチ
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by ishikoro-b | 2014-03-07 13:54 | 映画 | Comments(2)
Commented by 坪田龍樹 at 2014-03-08 12:52 x
はじめまして、私は坪田龍樹と申します。 
素敵なお話を、ありがとうございました。

今の私の心境とナジフの心境が、一致して、頑張ろうと思えました。

素敵な映画を紹介くださいまして、本当にありがとうございました。

心から感謝いたします。
Commented by ishikoro-b at 2014-03-10 12:06
坪田さま。
コメントありがとうございます。
心の琴線に触れる映画はどこか自分の心情に
通じるところがあるからでしょうね。
遠い国の出来事が日本も決して例外ではなかったりして
いろいろ考えさせられます。
慎ましやかな幸福の描き方も好感がもてる映画でした。
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