映画 25年目の弦楽四重奏

2012年のアメリカ映画「25年目の弦楽四重奏」をDVDで観ました。
カルテットのメンバーにふたりのオスカー俳優ですから期待度大。
そのひとり名優フィリップ・シーモア・ホフマンの訃報は
まだ記憶に新しいところ、返す返すも残念でなりません。
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舞台は冬のニューヨーク。
完璧なテクニックと美しいハーモニーで世界を魅了する
弦楽四重奏団「フーガ」は結成25周年目を迎えようとしていました。
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ピーター役は個性派俳優のクリストファー・ウォーケン。
年長者で「完璧な四角」を支えるカルテットの中心的存在のチェリスト。
ダニエル役はマーク・イヴァニール。
冷酷なまでに完璧な演奏で客を魅了する第一バイオリン担当。
ロバート役はフィリップ・シーモア・ホフマン。
カルテットに色彩と質感とリズムを与えみんなを繋ぐ第二バイオリン担当
ジュリエット役は、キャサリン・キーナー。
カルテットの紅一点。ビオラでカルテットの音に深みを添えています。

ロバートとジュリエットは私生活では夫婦。
ふたりにはバイオリニストを目指す娘アレクサンドラがいて
ダニエルがアレクサンドラの個人レッスンをしているという
設定でドラマは展開していきます。
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結成25周年目の記念コンサートのプログラムに取り上げたのは
ベートーベンの晩年の名作「弦楽四重奏曲第14番 嬰ハ短調作品131」
この曲を聴いたシューベルトは
「この後で我々に何が書けるというのだ?」と言ったのだとか。
死の5日前には彼の最後の願いで「作品131」を演奏させたのだそうです。
ロバートがバイオリニストを目指す娘アレクサンドラに言います。
「我々四重奏団が死の床のシューベルトを囲んでいる。
彼が聴く地上で最後の曲を演奏する・・・」
「作品131」を演奏する前はそう想像して演奏に挑むのだと。

7楽章から成り立つ「作品131」は全楽章途切れることなく演奏されます。
したがってこの曲は途中音程が狂ってもチューニングができない。
各楽器それぞれに狂ったままの音程を最後までどのように演奏するか・・・
それは人生そのもののテーマにも重なります。
狂っていく音程を超越してこそ到達出来る美しい調和の響き・・・
ベートーベンの晩年の境地と「フーガ」のメンバーの人間模様を
巧く絡ませた監督ヤーロン・ジルバーマンの演出が冴えます。

劇中のこんな会話も興味深いです。
アレクサンドラがダニエルに「なぜソロにならなかったの?」と聞きます。
「仲間が大切だから」とダニエルは答えます。
「ソリストの場合、オーケストラと数回リハーサルをして本番・・・
それで終わりだ。次の街、次の指揮者、次のオーケストラ・・・
我々四重奏団は昨年3000回目のコンサートを祝った。
意味のある演奏にはこの方法しかない。
偉大な作曲家の魂を探るには四重奏団が一番なんだ」

なるほど・・・納得です!
こんな会話のひとつひとつが映画に厚みを加えていきます。
クラシックに詳しくない者にとってもこんなエピソードとともに
映画を鑑賞できるのはとても新鮮で、幸せなことです。
他にもパブロ・カザルスの言葉や
ピーターの亡き妻のメゾソプラノ歌手のこと
最後の仕掛けも・・・見所満載です。

25年間も家族のような調和で結ばれたカルテットでしたが
記念コンサートの練習中、思わぬ事態が彼らを襲います。
それはチェリスト、ピーターの突然の引退宣言でした。
パーキンソン病の初期であることを打ち明けるのです。
ピーターは一年前に愛妻を亡くしたばかり。
年老いた身に降り掛かる苦悩が切ないです。
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ピーターのいない弦楽四重奏団「フーガ」・・・
新たなメンバーを迎えて存続させるか、解散するか・・・
動揺を隠せないメンバーたちに様々な不協和音が響き始めます。
ロバートの第一バイオリンへのこだわり。
ロバートの不倫と妻ジュリエットとの不仲。
音楽一途だったダニエルとアレクサンドラの秘めた恋。
それを知ったジュリエットとアレクサンドラの確執。
それまで抑えていた様々な愛憎が一気に露呈していくのです。
そんな中、ピーターは絶望の淵に立ちながら
芸術こそが人生の苦悩から魂を救ってくれるものと信じ
静かに事態を見守るのでした。
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狂ってしまった人生の四重奏・・・
25周年記念コンサートはできるのでしょうか?
ロバートとジュリエットの関係は?
そんな疑問が映画の冒頭のシーンに見事に繋がっていくのです。
ピーターが学生たちの前で読むT・S・エリオットの
ベートーベン弦楽四重奏曲を謳った詩の一節・・・
「すなわち 終わりが始まりに先行し 始めの前と終わりの後に
常に終わりと始めがあるとすれば 全ては常に「今」なのだ」

最後のシーンはフーガ結成25周年コンサート。
ベートーベンの「弦楽四重奏曲第14番 嬰ハ短調作品131」が
演奏され、弦楽器の美しい響きが会場を満たしていきます。
途中で演奏を辞めるピーター・・・
カルテットは新メンバーを迎えて新生「フーガ」として
スタートするのでした。
4人の心は再び音楽でひとつになって幕を閉じるのでした。

それにしてもみんな楽器の扱い方が実に自然・・・芸達者です。
弦楽器の色調で統一された映像も美しい。
渋くて深い大人の映画に仕上がっていました。

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監督・脚本・製作: ヤーロン・ジルバーマン
原題 : 「EA LATE QUARTET」
製作年/国 : 2012年 アメリカ       
出演: フィリップ・シーモア・ホフマン
    クリストファー・ウォーケン
    キャサリン・キーナー
    マーク・イヴァニール
    イモージェン・プーツ
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by ishikoro-b | 2014-05-15 00:06 | 映画 | Comments(0)
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