カテゴリ:映画( 34 )

映画 ピノイ・サンデー

毎年、優れたアジア映画が紹介されるNHKアジアフィルム
フェスティバル。
10月の始めからBSプレミアムで放送されました。
日本では殆ど上映されない作品をBSで観ることができるのは
とても嬉しいことです。
映像、音楽、アイデアなど、アジア映画のレベルの高さには
驚くばかり。ハリウッドにも負けてなんかいません。

その中のひとつ、「ピノイ・サンデー」を観ました。
またお気に入りの映画がひとつ増えました。
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台北で暮らすマヌエルとダドはフィリピンからの出稼ぎ労働者。
寂しい気持ちを抱えながらも異国の地でたくましく生きています。
寮生活をしていますが、門限を3回守らなければ
強制送還という厳しい掟付き。
そんなふたりの楽しみは仕事を終えた後の寮の屋上で飲むビール。
でもそこには固い無愛想な椅子があるだけ。
マヌエルの夢は寮の屋上に豪華なソファーを置いて、
星空を眺めながら冷えたビールを飲むことでした。

そんなある日曜日、ふたりは道端に捨てられていた
真っ赤なソファーを見つけます。
目の前に転がっている至福。
マヌエルは気乗りがしないダドを説得して、
郊外にある寮までソファーを運ぶことにしました。
しかし運送屋を雇うお金もなく、バスにも大きすぎて無理。
ふたりは自力で運ぶことを決意します。

真っ赤なソファーと男たちのロードムービーの始まり。
大きなソファーの前と後ろを抱えてヨタヨタと、交差点も命がけ。
行く先々で思わぬトラブルに巻き込まれたりして、
コミカルなのにどこか出稼ぎ労働者の悲哀が滲みます。
へたりそうになりながらも、マヌエルはいつも楽観的、
強制送還に怯えるダドを明るく励まします。
やがてタドの機転で苦境を乗りきったりして、
夢の実現に近付いたかのように見えましたが、
最後は大きな川がふたりの行く手を阻みます。

大事なソファーを濡らさないように川を渡ろうとするふたり。
深みにはまって溺れそうになります。
精一杯頑張っても、それでも諦めるしかない運命。
彼らはそれを素直に受け入れます。
夜が来て帰れないふたり、寮の門も閉まって・・・
疲労困憊のふたりはソファーで眠ってしまいます。
ソファーの舟に乗って「二人が離れても必ず会える日がくる」と
歌いながら川を下る束の間の夢のシーンは、もう最高!
どんなに辛くても人生っていいなと思わせてくれる
名シーンでした。

夜が明けて、
川の中に置き去りにされた真っ赤なソファーは
夢の抜け殻のような寂しさと切なさがありました。

人生なんてそんなもの。
何をやってもうまくいかない人たち。
慎ましやかな幸福さえ手に入れられない人たち。
だからこそ夢見ることの尊さを思います。
簡単に叶わないものだから夢は尊いのだと映画は
静かに教えてくれます。

監督はマレーシア出身で中国系のウィ・ディン・ホー。
数多くの短編映画で高い評価を得ている監督で、
これが長編デビュー作とか。
上手に生きられない人たちへの優しいまなざしが素敵でした。

ついでにウチのソファーです。
ソファーに寝転がって映画を観たりお昼寝するのが夢でした。
あの〜(小さな声で)
トラックファニチャーのソファーなんです。
一生一度の贅沢。
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赤いクッションはソファーを買う時、迷える私の背中を押して
くれたふーテトママさんのハワイアンスラッシュキルト。
ソファーのお祝いにプレゼントしてくれました。ありがとう!!!

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by ishikoro-b | 2011-10-25 00:10 | 映画 | Comments(6)

映画 迷子の警察音楽隊

DVDで2007年のイスラエル映画「迷子の警察音楽隊」を
観ました。
イケメン俳優もドラマチックな展開もないけれど、
この映画・・・好き好き大好き!!!
誰かに教えたくなるほど素敵な余韻の残る映画でした。
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長年民族対立が続いていたエジプトとイスラエル。
文化交流のためにエジプトの警察音楽隊がイスラエルに
招かれました。が、なぜか空港には迎えが来ていない。
迎車と思わせる白いワンボックスカーがスーっと動いた後に
取り残されたように現れる8人のアレキサンドリア警察音楽隊。
折り目正しいブルーの制服にキャリーバッグと楽器を持って
呆然と佇む姿はまるでおもちゃの兵隊さんのようでした。

隊長のトゥフィークは歴史あるアレキサンドリア警察音楽隊の
誇りを守るべく若い隊員の行動にも口うるさい。
隊長の自力で目的地の町まで行くとの指示で隊員たちは
バスに乗りますが、着いた所はよく似た名前の違う町。
ホテルは疎か演奏する文化センターなどない砂漠の
殺風景な町でした。

バスもない、お金もない。
偶然開いていた小さな食堂。途方に暮れているところを
食堂の女主人ディナに助けられます。
隊員たちは食堂、彼女の家、店の常連イツィクの家の3箇所に
分かれて泊まることになりました。
それぞれの家で育まれる一夜限りの心温まる物語。
言葉も不自由、アラブとユダヤの気まずい関係。
ぎこちない空気を解きほぐすのは、たどたどしい英語での
精一杯のやりとりと音楽でした。

女主人ディナの魅力は豪快なスイカの割り方でもわかります。
パカッと割られたスイカとペディキュアの赤がハッとするほど
エロチックでドキッ。ディナは美しい人です。
そんなディナにドギマギする隊長トゥフィークの表情も
微笑ましく見えました。
「何で警察が音楽を?」とディナ。
「なぜ人に魂が必要です?」とトゥフィークは答えます。
ふたりの心は近づいていきます。
ディナはトゥフィークを夜の町に誘います。
食事の後、ベンチに座って会話を楽しむ大人のふたり。
「オーケストラを指揮するってどんな気持ち?」とディナ。
トゥフィークは言葉ではなく指揮のジェスチャーで答えます。
ディナもそれを真似てふたりでエア指揮。
とても素敵なひととき、至福のシーンでした。

イツィクの家の食卓も落ち着かない雰囲気。
それでも家族と隊員が一緒に歌う「summertime」が
泣かせます。
未完成の「クラリネット協奏曲」を披露した隊員にイツィクが、
協奏曲の最後は、小部屋で赤ん坊が眠るように・・・と
静かにアドバイスするシーンなんて、うまいんだなあ。

ローラースケート場で、女の子にうまく気持ちを
伝えられない男に、若い隊員カーレドが恋の手ほどきをする
3ショットのシーンも音楽と共に最高。

カーレドが吹くトランペットの「my funny valentine」も
深夜の意外な展開のプロローグのようでした。

そしてお別れの朝です。
バイバイと腰のあたりで小さく手を振るシーンは
人と人の距離が少し縮まったかのようで嬉しくなります。
次のシーンでは8人の隊員の姿がぱっと消えて、
まるで夢を見ていたかののように映画は終わります。
もっとずっと見ていたい、地味だけど心に沁みる映画でした。

この映画では、食堂の壁面に飾られた一枚の戦争の写真が
かつて敵対していたことを仄めかす唯一のシーンです。
ひとりの隊員が写真を見つけて気まずそうに
帽子でそっと写真の額を隠します。
あえて過去の苦いエピソードをなくした構成にも
新しいセンスを感じました。
国家間の溝は深くとも、人と人の繋がりって
案外こんな簡単なものかもしれません。
人は寂しがりやで、できればいつも誰かと
仲良くしていたいですもの。
こんなささやかな連鎖が和平に繋がるような気がします。
人を好きになる気持ちも、家族を思う気持ちも皆同じ。
国が違っても、言葉が違っても、神様が違っても、
音楽があれば分かり合える。
分かりきったテーマだけど、その表現の仕方が小粋。
映像もスタイリッシュ。
アマゾンをポチっとしそうになりました。

OLYMPUS XAで撮ったサンドベージュの世界。
誰もいない公園のブランコは
平和な静けさの中に揺れていました。
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by ishikoro-b | 2011-10-11 21:14 | 映画 | Comments(8)

映画 泥の河

18日に放送されたNHK BSシネマの「泥の川」を
やっと観ることが出来ました。
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舞台は昭和31年、もはや戦後ではないという言葉が
生まれた頃の大阪。
世間の流れから取り残されたような川縁で、
うどん屋を営む夫婦の息子ノブちゃんと、
対岸の廓舟で暮らすキっちゃんの、
束の間の切ない出会いと別れを端正なモノクロ映像で描きます。

貧しいながらも両親の愛情に恵まれたノブちゃん。
それでもいろいろな事情があって小さな傷を抱えています。
ノブちゃん家の窓から、対岸に廓舟が見えました。
その舟には学校へ通うことの出来ないキっちゃんと
姉のギン子、そして娼婦の母が暮らしていました。

ノブちゃんとキっちゃんの出会いは雨の日の橋の上でした。
キっちゃんが川に棲む「おばけ鯉」を
見つけてノブちゃんに教えたことから
共通の秘密をもったふたりは友だちになります。
二人の少年の後ろ姿の可愛いこと。

キっちゃんの舟に遊びに来たノブちゃんを
「遊びにきたんかぁ、遊びにきたんやろ〜」
と迎えるキっちゃんの言葉に胸が熱くなります。
舟に友だちが来るなんてなかったんだろうなって。

ノブちゃん家の夕食に招かれたキっちゃんは
得意の歌を披露します。
「ここは〜おくにの〜なんびゃくり〜」
キっちゃんの亡き父が口ずさんでいた軍歌を
9歳のキっちゃんが歌うシーンはとても切ないです。
ノブちゃんのお父さんは自分の苦い戦争体験のことを
思いだしながらキっちゃんの声に耳を傾けます。
そしてキっちゃんの歌を誉めたたえます。
これまで祝福も賞賛もなかったキっちゃんの生い立ち。
だれかが自分の人生を認めてくれる。
素晴らしいシーンです。
これさえあればどんな困難だって乗り越えていけますもの。

キっちゃん家の舟には岸から二つの小さな木の橋が
渡してありました。
一つはキっちゃん姉弟の生活の橋。
そしてもう一つは、子供は渡ってはいけない橋。
ノブちゃんはお父さんから
「夜は遊びに行ってはいけない」と言われています。
でもキっちゃんに誘われて、とうとう夏祭りの夜に
行ってしまうのです。

宝物を見せてあげると仕掛けていた蟹の罠を
川から揚げたキっちゃんは、
その蟹をアルコール?に浸して火を付けます。
燃えながら逃げ惑う蟹、
少年たちの心の痛みが残酷なシーンで表現されます。
可哀想・・・と焼ける蟹の後を追うノブちゃん。
そして偶然にも灯りが溢れる小窓から見えたものは・・・

次の日、別れの言葉も残さずキっちゃんの舟が動きだします。
どこまでも走って後を追うノブちゃんのラストシーン。
キっちゃんは最後まで姿を見せてはくれませんでした。

傷つきながら少しずつ大人の事情を知っていく少年たち。
人々の様々な思いを溶かして川は流れます。

キっちゃんの母役、娼婦の加賀まりこさんの美しいこと。
ノブちゃんの父役、田村高廣さんの優しくも
どこか後ろ暗い半生を感じさせる味わい深い演技。
ノブちゃんの母役、藤田弓子さんの子供たちに注ぐ
眼差しの温かいこと。
そして、ノブちゃん、キっちゃん、ギン子ちゃんたち名子役の
初々しくて凛とした演技が映画を「名画」にしたのでしょう。

いつまでも心に残る素晴らしい映画でした。

↓岡山市百間川の河口付近でみつけた私の「泥の河」イメージ。
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フィルムカメラで撮りました。


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by ishikoro-b | 2011-09-20 21:39 | 映画 | Comments(4)

映画 ツリー・オブ・ライフ

遅ればせながら、映画「ツリーオブライフ」を観ました。
ブラッド・ピット、ショーン・ペン、
期待を裏切らない素晴らしい映画でした。
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舞台は1950年代のアメリカ・テキサスの田舎町。
厳しい父と慈愛に満ちた優しい母、
そして3人の兄弟たち。
夢のような美しい自然に包まれていながら
毎日の生活は「力こそすべて」の厳格な父に
完全に支配されていました。
父と子の葛藤を主軸に、兄弟の絆や
儚げな母の美しさが描き出されます。

中年になり社会的な成功をおさめた主人公の
長男ジャックは愛する弟の死を知ります。
少年期の苦しくも美しい思い出を回想しながら
自分の生き方を神に問うかたちで
映画は展開していきます。
途中、挿入されるネイチャードキュメンタリーのような
宇宙の創造、生命の誕生、地球の歴史などのイメージ。
それが神の答えでもあるかのように、
ジャックは喪失から再生への光を見つけていくのでした。

映画を観ながら、
宮沢賢治の「わたくしという現象は仮定された
有機交流電燈のひとつの青い照明です」の一節を
思い出しました。
生命の誕生から死に至る輪廻の中で
連綿と繰り返される人々の営み。
私たちの人生も長い宇宙の歴史の一現象と思わせる
斬新な構成は、不思議なくらい安らぎを覚え
至福の時間でもありました。

父親が出張と聞いて開放された子供たちが遊ぶシーンの
交響詩「モルダウ」の使い方の心憎いこと。
私の心もここで一緒に解き放たれました。
母親役のジェシカ・チャステインのワンピース姿も
女性らしい美しさに溢れ、いつもジーンズカジュアルの
自分の姿が恥ずかしくなりました。

圧倒的な映像美、心揺さぶる音楽、
あまりに素晴らしくて2回も観てしまいました。
こういう映画は大スクリーンでないとね。
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大きな木、豊かな水、風に揺れる草・・・
↑映画に触発されてこんな写真を撮りました。


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by ishikoro-b | 2011-09-09 15:58 | 映画 | Comments(0)