18日に放送されたNHK BSシネマの「泥の川」を
やっと観ることが出来ました。 舞台は昭和31年、もはや戦後ではないという言葉が 生まれた頃の大阪。 世間の流れから取り残されたような川縁で、 うどん屋を営む夫婦の息子ノブちゃんと、 対岸の廓舟で暮らすキっちゃんの、 束の間の切ない出会いと別れを端正なモノクロ映像で描きます。 貧しいながらも両親の愛情に恵まれたノブちゃん。 それでもいろいろな事情があって小さな傷を抱えています。 ノブちゃん家の窓から、対岸に廓舟が見えました。 その舟には学校へ通うことの出来ないキっちゃんと 姉のギン子、そして娼婦の母が暮らしていました。 ノブちゃんとキっちゃんの出会いは雨の日の橋の上でした。 キっちゃんが川に棲む「おばけ鯉」を 見つけてノブちゃんに教えたことから 共通の秘密をもったふたりは友だちになります。 二人の少年の後ろ姿の可愛いこと。 キっちゃんの舟に遊びに来たノブちゃんを 「遊びにきたんかぁ、遊びにきたんやろ〜」 と迎えるキっちゃんの言葉に胸が熱くなります。 舟に友だちが来るなんてなかったんだろうなって。 ノブちゃん家の夕食に招かれたキっちゃんは 得意の歌を披露します。 「ここは〜おくにの〜なんびゃくり〜」 キっちゃんの亡き父が口ずさんでいた軍歌を 9歳のキっちゃんが歌うシーンはとても切ないです。 ノブちゃんのお父さんは自分の苦い戦争体験のことを 思いだしながらキっちゃんの声に耳を傾けます。 そしてキっちゃんの歌を誉めたたえます。 これまで祝福も賞賛もなかったキっちゃんの生い立ち。 だれかが自分の人生を認めてくれる。 素晴らしいシーンです。 これさえあればどんな困難だって乗り越えていけますもの。 キっちゃん家の舟には岸から二つの小さな木の橋が 渡してありました。 一つはキっちゃん姉弟の生活の橋。 そしてもう一つは、子供は渡ってはいけない橋。 ノブちゃんはお父さんから 「夜は遊びに行ってはいけない」と言われています。 でもキっちゃんに誘われて、とうとう夏祭りの夜に 行ってしまうのです。 宝物を見せてあげると仕掛けていた蟹の罠を 川から揚げたキっちゃんは、 その蟹をアルコール?に浸して火を付けます。 燃えながら逃げ惑う蟹、 少年たちの心の痛みが残酷なシーンで表現されます。 可哀想・・・と焼ける蟹の後を追うノブちゃん。 そして偶然にも灯りが溢れる小窓から見えたものは・・・ 次の日、別れの言葉も残さずキっちゃんの舟が動きだします。 どこまでも走って後を追うノブちゃんのラストシーン。 キっちゃんは最後まで姿を見せてはくれませんでした。 傷つきながら少しずつ大人の事情を知っていく少年たち。 人々の様々な思いを溶かして川は流れます。 キっちゃんの母役、娼婦の加賀まりこさんの美しいこと。 ノブちゃんの父役、田村高廣さんの優しくも どこか後ろ暗い半生を感じさせる味わい深い演技。 ノブちゃんの母役、藤田弓子さんの子供たちに注ぐ 眼差しの温かいこと。 そして、ノブちゃん、キっちゃん、ギン子ちゃんたち名子役の 初々しくて凛とした演技が映画を「名画」にしたのでしょう。 いつまでも心に残る素晴らしい映画でした。 ↓岡山市百間川の河口付近でみつけた私の「泥の河」イメージ。 フィルムカメラで撮りました。 ブログ「猫日和。キルト日和。」でおなじみのふーくんが にほんブログ村ランキングの応援に駆けつけてくれました。 ありがとう、ふーテトママさん、ふーくん。 ふーくんバナーをクリックしていただけると嬉しいです。 応援ありがとうございます。
by ishikoro-b
| 2011-09-20 21:39
| 映画
|
Comments(4)
「泥の河」素晴しい日本映画ですね。見ていませんが素晴しい映像を想像させていただける解説です。機会があれば見てみたいと思います。
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Commented
by
ishikoro-b
at 2011-09-21 21:31
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キャリオさま。
「泥の河」の少年たちが今の日本を築き上げてきたのかと 思うと、より感慨深いものがありました。 貧しいけれど誇りを胸に真っ直ぐ前を向いて歩く。 今こそ、あの頃のパワーで日本を元気にしたいですね。
国民一人ひとりにとって、自分の人生の目標を「ノーサイド」でなく「マイサイド」として決めるのは自分の責任です。自信を持ってそれが出来るように、自分を見つめ、社会を見つめなくてはなりませんね。
憂きし世をじっと見つめて秋の空
Commented
by
ishikoro-b at 2011-09-27 01:52
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