1997年のフランス・ルーマニア映画
トニー・ガトリフ監督作品「ガッジョ・ディーロ」を DVDで鑑賞しました。 凍てついた大地をひとりの若者が旅しています。 どれだけ歩いたのか靴はボロボロ。 「もう歩けない」 座り込みチーズで空腹を満たす若者。 そして立ち上がり道の真ん中で踊り始めます。 腕を組み片足を挙げてくるくる廻りながら。 我ら民族は ジタン ツィガーヌ ジプシー チゴイネル 消えるだろう この世から・・・ バックに流れる郷愁漂う悲しくも美しい歌が 観るものの心を掴みます。 歌に合わせて廻りの雪景色もくるくる。 私も旅人となってロマの村の ガッジョ・ディーロとなるのです。 「ガッジョ・ディーロ」とは「愚かなよそ者」のこと。 「ロマ」とは「ジプシー」のことで、 最近では「ジプシー」は蔑称とされていて 「ロマ」と呼ぶのが適切なのだそうです。 パリからやってきた青年ステファンは 亡き父の遺したロマの歌のテープに魅せられ 幻の歌手「ノラ・ルカ」を探してロマの村に辿り着きます。 泊まる所もないステファンは 村の老人イジドールと出会います。 イジドールは息子が無実の罪をきせらて やり場のない怒りと悲しみに酔いつぶれていました。 イジドールの家に滞在することになりますが言葉も通じない。 ステファンの目的もなかなか理解してもらえません。 それでも村人からよそ者盗人扱いされるステファンを 「天から降りてきた神の遣いだ」と 親切に受け入れてくれます。 イジドールはヴァイオリンの名手で 人懐こくて酒好きの女好き。 ステファンはイジドールに振り回されながらも 次第に惹かれていきます。 村に電気を灯したり フライパンで作った蓄音機にレコードをかけて 手で回すと新聞紙を丸めたスピーカーから音楽が流れて 村人の目のキラキラ輝くシーンは ステファンからの素敵な贈り物でした。 村の暮らしに少しなじんではきたけれど なかなか見つからない歌手「ノラ・ルカ」 村のセクシーで気性の荒い女サビーナも、 最初はよそ者ステファンを嫌いますが、 やがてステファンの音楽収集の協力者となり 愛し合うようになります。 酒場でお皿を割って踊るふたりのダンスの情熱的なこと。 酔っ払ったステファンの耳元で サビーナが囁くように歌ったのは「ノラ・ルカ」の歌。 「これだ!ノラ・ルカだ」 「ルーマニアで昔から歌われている歌よ」 サビーナはステファンに顔をくっつけて 泣くように歌います。 生きることのすべてを音楽にして 歌い踊るしかないロマの人々。 迫害や差別など彼らが味わっている苦しみが 人間ドラマとして描かれていきます。 哀愁溢れるロマの歌は本当に泣けます。 最後に迎えるイジドールの息子の悲劇。 「神様 なぜです 教えて下さい なぜ黒い肌に生まれてついたの・・・」 村を焼かれるシーンのバックに流れるこの歌は 涙なしには観られません。 息子の死の知らせを受けてイジドールは 「ああ神様、辛すぎます!」と 地面を叩き、胸を掻きむしり叫ぶのです。 ロマの村で暮らし、ロマの女を愛したステファン。 人々との触れ合いを通して彼もまた成長していきます。 ロマの魂の奥深さに触れた彼にとって 「ノラ・ルカ」や録音収集した過去の音楽は もう意味をなさないものとなったのでしょう。 穴を掘って録音テープを叩き壊し埋めてしまうのです。 そしてその土の上に儀式のようにお酒を振りかけ またゆっくり踊り始めるステファン。 それは大人になったステファンの姿でした。 配役は主役のふたり以外はみんなロマの人を 起用したのだとか。 イジドール役の老人はロマの本物の楽士。 ヴァイオリンも素人とは思えない演技も 最高に素晴らしかったです。 彼の存在なくしてこの映画は成り立たなかったでしょう。 しみじみと余韻の残る素晴らしい映画でした。 ☆ ☆ ☆ ランキングの応援に駆けつけてくれた ブログ「猫日和。キルト日和。」でおなじみのふーくん。 ふーくんバナーをクリックすると きっとあなたにもいいことが・・・ 応援ありがとうございます。
by ishikoro-b
| 2012-02-01 02:59
| 映画
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