BSプレミアムで楽しみにしている番組のひとつに
「アクターズ・スタジオ・インタビュー」があります。 アクターズ・スタジオは数々の名優たちが演技を磨いた アメリカを代表する演劇の専門学校。 アクターズ・スタジオの副学長、演出家でもある ジェームズ・リプトンが、演技や演出を学ぶ学生たちの前で 第一線で活躍する映画人をゲストに招き インタビューする番組です。 ゲストのキャリアに敬意を払いながら、ユーモアも交え ゲストに本音を語らせるジェームス・リプトン。 知性をと品格を湛えたブルーの瞳が素敵です。 ゲストの素顔や作品の裏話が聞けたり 苦手だった俳優が好きになったり 毎回、興味深く観ることできます。 7月8日の放送分の録画を遅ればせながら観ました。 「ミッキー・ローク自らを語る」です。 ミッキー・ロークもアクタース・スタジオの出身者でした。 「ナインハーフ」のエロチシズムにドキドキした昔が懐かしい。 番組はミッキー・ロークが歩んできた道を辿ります。 帽子にサングラス、マグカップ持参・・・ お行儀悪そうな出で立ちで登場しました。 若い頃の甘いマスクとはあまりに違う風貌に愕然。 そんなミッキー・ロークをジェームズ・リプトンは 温かく迎えます。「ミッキー、お帰り」と。 まずはいつもの質問から。 出身は、本名は、そしてお母さんの名前は? 少し間をおいて「M」とだけ。 「いろいろあってね。」 6才の時、両親の離婚。10年間に及ぶ義父からの虐待。 弟が不憫だった。義父の暴力から弟を守ってやれなかった。 そして母親は知らん顔をしていたと。 家の近くのボクシングジムだけがイヤなことを忘れられる 場所だった。けれど脳震盪を起こしてやめた。 タバコもプカプカ。マグカップの中身は水?お酒? 落ち着きのないヤンチャな男に ジェームズ・リプトンの眼差しが何とも優しいのです。 子供の頃から働き詰めだった。 ギャングになろうと思っていた。 麻薬が買える場所に金持ちを案内して駄賃を稼ごうとしたが ある晩、取引の場で銃弾が飛び始めた。 けれど、かっこ良く撃つことができず、奮えて逃げ出し ギャングは向いていないと思い俳優の道を目指した。 そしてニューヨークへ。 アルバイトでお金を貯めて演劇学校へ入ろうと思っていたところ アクターズ・スタジオの一員だった人と出会う。 「熱いトタン屋根の猫」でオーディションを受けようとしたら そこに登場する父親像が理解できなかった。 その人から20年以上会っていない実父に 会ってくるように言われる。 電話で居場所を確かめてハンバーガー屋に行ったら ある男の手と背中に見覚えがあった。 外に出て、同じ背丈が嫌で、道路の溝に下りて父親に声をかた。 父は「いつか来ると思っていた」と。 7時間も話したが、実父と会ったのはそれが最後だった。 オーディションでは数千人が受けて5人が最終候補に。 ミッキーは見事に合格。 アクターズ・スタジオの創設者エリア・カザンが 最高のオーディションだったと絶賛したのだとか。 そして彼は「ランブルフィッシュ」や「ナインハーフ」など 次々とハリウッドの話題作に出演、俳優として絶頂期を迎えます。 しかし、監督や映画会社との確執などから 次第にメディアに背を向けるようになるのでした。 自分を見失っていた・・・ 映画会社や監督、ダメな映画のせいにしていた。 どうしていいかわからず、ひどくなるばかりだった。 34才でまたボクサーに。皆は引退する年です。 タイトルも取れず、体中あちこち骨折。鼻に至っては骨折5回も。 耳の軟骨で砕けた鼻を治したとか。 神経障害から一時的に記憶喪失にも。 医師からは再起不能になると宣告さました。 そして家も妻も仕事も名誉もすべて失い 14年もの失意の日々を過ごすのでした。 悪魔は薬物や酒ではなかった。 カトリックでなければ自殺していたかも・・・ 心理療法や神父との出会いが、少しずつ彼に変化を もたらしました。 ワインとタバコを手にしても懺悔を聞いてくれた神父さんは 最高です。 長い暗闇から脱しつつあった2004年に転機は訪れます。 「なにが起きた?」の質問に、彼はうつむいて言葉を失います。 弟の枕元にいたら、看護士から話があるといわれ何かを感じた。 「彼は数日前に死んでいても不思議ではない。 別れを言ってあげなさい」・・・彼は別れを告げた。 そしてその30秒後に弟は亡くなった。 「今でも弟を大事に思ってる?」泣きながらうなずくミッキー。 彼の指に彫られたタトゥーが弟の名前だとわかった時 ジェームズ・リプトンは言います。 「なんて人だ、胸を打たれる」と。 映画「レスラー」のエピソードも興味深かったです。 監督が会いたがっているというので会いに行ったら 挨拶もしないうちに「君の名前じゃ資金は集まらない。 撮影では私に従うんだ。一切逆らうな。」と言われたとか。 「俺はまだ何も・・・」ミッキーの表情がよかったです。 脚本はミッキー自らも携わって形になったとか。 「レスラー」はミッキーの人生そのもののような映画。 ゴールデングローブ賞をはじめ、数々の賞に輝きました。 でも彼は自分の映画を観ていないのだそうです。 「お勧めだよ」とジェームズ・リプトン。 いいなあ。 「バカで無責任な生き方をしてきた。15年前に 変われればよかったよ」 「でも、たいていの人は君に及びもつかないんだよ」 「さあ・・・」 「そうだよ」 ミッキー・ロークの人生に賛辞を惜しまない ジェームズ・リプトンの姿勢にも熱いものが込み上げてきます。 こんなインタビュアーが日本にいるでしょうか。 この番組には、恒例のピボーの10の質問というのがあります。 4番目の質問「げんなりするのは?」 「動物虐待」会場から拍手が起こります。 彼は強いものには刃向かったけれど 弱いものいじめは決してしなかった。 そして最後の質問 「天国の入り口に着いた時に、神に何と言われたい?」 「弟さんは、そちら。女性は、あちら」・・・巧い! 親友だったショーン・ペンとは喧嘩をして12年も 口をきかなかったとか。 文無しなのを白状すると「映画に出ないか」と 誘ってくれたのだそうです。 彼はひとりぼっちではなかった。彼を愛する人がいて ちゃんと手を差し伸べていてくれたのです。 「自分なりに生きていくとする。 無責任で強情、我が道を行く。 でもそれは強さではなく弱さになってくる。 突然、自分を変えなければと思い始める。 なにかがおかしい。これじゃダメだと。 変らなくてはと思う。 それでいいんだ。変るのは弱さじゃない」 ミッキー・ロークの言葉で番組は終わります。 純粋ゆえに不器用にしか生きられなかった彼の人生。 どん底の生活の中にも生きる意味がありました。 暗闇の中で変ろうともがいたミッキー・ロークが たまらなく愛おしく感じられたインタビュー番組でした。 猫のミッキーです。ミッキー・ロークのイメージに似ている? ☆ ☆ ☆ ランキングの応援に駆けつけてくれた ブログ「猫日和。キルト日和。」でおなじみのふーくん。 ふーくんバナーをクリックすると きっとあなたにもいいことが・・・ 応援ありがとうございます。
by ishikoro-b
| 2012-07-21 00:46
| 映画
|
Comments(2)
人の半生をドラマにしたら真実味のあるドラマになりますね。
いつか自分のドラマを書いてみたいものです。 キャリアカウンセラーの訓練の中で自分の人生を振り返ることがあります。 なかなか面白いドラマができるものですよ。
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by
ishikoro-b at 2012-07-24 01:52
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