思えば30年も前のことになりますが
職場の上司の書道の作品で「冬夜読書」という 七言絶句を知りました。 漢詩など解読不能の私でしたが、意味を解説してもらうと 雪の夜の、先人たちの書物をひもとく喜びが 静かに私の心を満たしていったのでした。 しかし・・・ 作者名も忘れ、ずっと中国の詩人だと思い込んだまま30年。 最近になってふとネットで調べてたら 「冬夜読書」の作者は管茶山。 江戸時代後期の儒学者・漢詩人で、広島県福山市神辺町出身。 茶山が人材育成のために開いた塾「廉塾」が 今も残されていると書いてあったのでした。 ええっ!管茶山が神辺町の人・・・ そういえば私の田舎から車で西へ40分ほど 広島県神辺町の国道沿いに、管茶山ゆかりの 案内標識を何度も目にしていたものの ずっと、管茶山って誰?程度で通り過ぎていたのです。 「冬夜読書」が菅茶山だったなんて・・・ こんな近くの人だったの・・・ 探していた人に30年ぶりに会えたのでした。 そんなこんなで 三連休の一日、廉塾(国特別史跡)を訪ねました。 入場無料で、観光ガイドの方が親切丁寧に 案内して下さいました。 大きなクスノキの下が正門です。 正門をくぐると中門に続く真っ直ぐな道と その両脇に菜園がひろがっています。 右手には「槐寮(カイリョウ)」と名付けられた塾生たちの 寮舎があります。「槐」はエンジュの樹のこと。 以前は3棟あったそうですが、焼失して現在は1棟だけに なっていました。 左手には養魚池があって鯉や鮒で客人をもてなしたのだとか。 防火用水としての目的もあったそうです。 石碑の文字は茶山の書といわれ 廉塾養魚池は政酉(寛政の酉年=1789年)杪冬(12月)につくると 書いてありました。 中門。少し小さめサイズの屋根瓦が苔むして 長いと年月を忍ばせました。 格子戸の入り口も風情があります。 簾塾の講堂。頼山陽は簾塾の塾頭でした。 講堂の中庭には水路が引かれていて豊かに水が流れていました。 ここで塾生が筆や硯を洗ったのだそうです。 その時の光景を詠んだ詩の一節にハッとなりました。 「奔流手に触れて別に声を出す」 硯を洗う手が流に触れると水流の音が変った・・・ かすかな変化も見逃さない茶山の感性、凄いですね。 耳を澄ますと硯を洗う音が聴こえるような気がしました。 梅雨の頃にはブルーの美しい紫陽花が咲くのだそうです。 講堂玄関 中庭と講堂 講堂の東側 竹と板を組み合わせた斬新なデザインの濡れ縁。 心に染みる名詩もここで生まれたのかも知れません。 丸と四角の手水鉢は「方円の手水鉢」と呼ばれ 水は入れ物次第でどんなにでも形が変わる 人の教育も同じだ、と教育の大切さを表しているそうです。 最後にガイドさんが庭のタラヨウの葉っぱを採って来て くださいました。 タラヨウはハガキの語源となった葉っぱ。 葉の裏面を傷つけると本当に字が書けるので、驚きました。 紙が貴重な時代、塾生たちもメモ用紙代わりに 使ったのでしょうね。 ☆ ☆ ☆ ランキングの応援に駆けつけてくれた ブログ「猫日和。キルト日和。」でおなじみのふーくん。 ふーくんバナーをクリックすると きっとあなたにもいいことが・・・ 応援ありがとうございます。
by ishikoro-b
| 2013-02-16 22:55
| 冬の旅
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Comments(6)
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saya1202m at 2013-02-18 18:40
初めまして、こんばんは。
昨年の11月ごろに初めて訪問させていただいてから 時々お邪魔していました。 雪の蒜山や八塔寺など私の大好きなスポットを拝見して 地元の方なのかなって思ったのですが コメントする勇気がないまま、今日になってしまいました。 今回の漢詩もおぼろげながら、記憶の底にありましたので 嬉しくて、思い切ってコメントさせて頂きました。 今の季節にぴったりの詩ですね。 私は滅多に更新しないのですが、またお邪魔させてくださいね。 よろしくお願いいたします。
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ishikoro-b at 2013-02-18 20:24
sayaさま。
ありがとうございます。 実家は高梁市なんですが、今は岡山市内に 住んでいます。sayaさまも岡山ですか? 「冬夜読書」のこと、嬉しいです。 先人たちのセンス、本当に凄いですよね。 こちらも週に一、二回の更新ですが また遊びに来て下さいね。
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saya1202m at 2013-02-19 13:29
石ころさま こんにちは。
はい、私も岡山市内に住んでいます。 漢詩は高校の時習っただけで断片的にしか思い出せませんが 難解だけど興味深かったことは覚えています。 石ころさまのお写真と文章どれも心にしみます。 特にお父様とみかんの記事はじ~んときました。
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キャリオ
at 2013-02-19 16:09
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頼山陽が学んだ簾熟は落ち着いた佇まいですね。
いつか行ってみたいと思います。
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ishikoro-b at 2013-02-19 23:57
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ishikoro-b at 2013-02-20 00:01
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