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高倉健さんの「南極のペンギン」

高倉健さんが逝ってしまって寂しいですね。
訃報を知り、昔読んだ健さんの絵本エッセイ
「南極のペンギン」のことを思い出しました。
高倉健さんの「南極のペンギン」_a0223379_2149957.jpg

映画の撮影で世界を回った健さん。
旅をして、見たもの、感じたことが健さんならではの
やさしい言葉で綴られています。
唐仁原教久さんの素朴で温かな絵も健さんの文章に
彩りを添えています。
この本との出会いは本屋さんの文庫本コーナーに並んでいた
ペンギンと健さんの後ろ姿の表紙があまりに素敵で
思わず買ってしまったのでした。

表題作の「南極のペンギン」をはじめ「アフリカの少年」
「ハワイのベトナム料理人」など、十のエポソードで
綴られていますが、どの作品からも健さんが本当に美しいと思うもの
大事に思っていることがよく伝わってきます。
そして何より、人に対しても動物に対しても敬意を忘れず
けっして相手の生活や心の中に踏み込んだりしない。
少し離れた所からの温かいまなざしに健さんの気品を感じます。

私はこの本の最後の「沖縄の運動会」というお話が好きでした。
沖縄の島で偶然出会った運動会を島人と一緒になって応援する健さん。
子供たちの活躍に惜しみない拍手を送りながら
拍手はされるより拍手するほうがずっと心がゆたかになると
感じるのでした。
大スターという重圧や孤独を背負って生きていた健さん。
ひたむきに生きる人たちとのふれあいが
健さんの人生を支えてきたのだと思いました。

その島は夜空の美しい島でもありました。
健さんはその小学校の子供たちに望遠鏡をおくります。
先生から礼状が届いて、健さんはいいことをしたと
思っていたのだそうです。
それから機会があって健さんはまた小学校を訪ねました。
花壇に囲まれた校舎や掃除がゆき届いた教室や廊下を見て
健さんはこの島の子供たちは望遠鏡なんかなくても
十分ゆたかなのだと感じるのです。
そして「ぼくは望遠鏡をおくったことを少し後悔した」と
文章を締めくくってありました。

その最後の一行に私は健さんの深さ、大きなやさしさを感じました。
自分の行為を少し恥じる謙虚な健さんの心が本当に美しいです。
これこそが健さんの美学・・・
こんな旅人でいたいものです。

高倉健さんのご冥福をお祈りいたします。

☆ ☆ ☆

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by ishikoro-b | 2014-11-27 22:37 | 絵本 | Comments(0)
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