最近の音楽とかファッションとか、もう若い人にはついていけないと
つい尻込みしがちになりますが・・・ 26歳のカナダの映画監督、グザヴィエ・ドランの才能は 毎回、そんな私の心を打ちのめしてくれます。 最初に見たのが「私はロランス」・・・これが衝撃でした。 性同一性障がいに悩む主人公と、恋人の女性との10年にわたる 切ないラブストーリーでしたが、何と言ってもその抜群の映像センス! 空から洗濯物が降ってくるシーンは、今も鮮やかに脳裏に甦ります。 23歳の時の監督作品と知り、若い才能に震えました。 それから、19歳での監督デビュー作「マイ・マザー」のDVDを借りて 昨年は映画館で「トム・アット・ザ・ファーム」も観ることができました。 作品ごとに進化し、名を高めていくドラン監督の想像力。 監督だけでなく俳優、制作、脚本、編集、衣装までこなすのですから 才能が迸るってこのことですね。 そんな彼の最新作「Mommy/マミー」も期待を裏切らない完成度。 デビュー作「マイ・マザー」と同じ母と子の愛がテーマの作品です。 正方形のスクリーンサイズで見せる母と子の愛と葛藤の日々・・・ その窮屈な画面が、より濃密な母と子の関係を際立たせていました。 テーマは重いけれど、音楽の選曲も映像もスタイリッシュでオシャレ。 どのカットも一冊の写真集を開いているかのようでした。 物語の舞台は2015年、架空の国、カナダという設定。 そこで新政権による新たな法律のひとつが可決します。 それは発達障がいの子供を持つ親が、精神的肉体的に養育困難に陥った場合 法的手段を取らずに、子供を施設に入れる権利を持つというものでした。 (ネタバレ注意) ダイアンはシングルマザー。 15歳の息子スティーヴはADHD(多動性障害)で、情緒不安定になると 手が付けられないほど暴れるという問題を抱えています。 スティーヴは施設に入っていましたが、トラブルを起こしたことで ダイアンはスティーヴとの二人暮らしを余儀なくされるのでした。 スティーヴを引き取ってからというもの、母と息子の言い争いは 絶えないけれど、落ち着いているときのスティーヴは優しく素直な少年。 ある日、彼は「Mammy」のスペル入りペンダントをプレゼントします。 しかし、万引きではと問いただすダイアンの言葉に切れたスティーヴは ダイアンの首を絞めてしまうのでした。 息子を殴って逃げるダイアン・・・ 突然攻撃的になる息子にダイアンは戸惑うばかりの日々でした。 そんな時、ふたりは近所に住む教師の女性カイラと知り合います。 精神的なストレスから吃音になってしまって休職中のカイラ。 ダイアンからスティーヴの家庭教師を頼まれたことから ふたりとの関係を深めていくのです。 カイラの存在でダイアンとスティーヴの関係にも変化が訪れます。 カイラの吃音もまた少しずつ快方に向かっていくのでした。 三人の、これですべて上手くいくかのような青空の下 ローラースケートに乗ったスティーヴは、自分を解き放つかのように 正方形の窮屈な画面をフルスクリーンに押し広げるシーンがあります。 観ているものの心にも、風が吹き抜けるような開放感。 スクリーンの画角で心情を表現するなんて・・・なんと心憎いセンス! これは映画史に残る名シーンでしょうね。 どうぞこのまま幸せな日々が続きますように、と 祈らずにはいられませんでした。 しかし画面はまた元の正方形へ。 スティーヴが施設にいた時に起こしたトラブルの訴状が届くのでした。 お金に工面するダイアン。そんな母の苦労も顧みず荒れて 自殺未遂までしてしまうスティーヴ。 追いつめられたダイアンは、とうとうある決心をするのでした。 ピクニックと偽って楽しげにドライブする三人。 運転するダイアンの脳裏には、スティーヴが成長し結婚して 幸せになるシーンが浮かぶのでした。 切ない母の夢が、観るものの心を揺さぶり涙が溢れます。 その空想シーンには、またフルスクリーンが採用されて 大人になったスティーヴをグザビエ・ドランが演じていました。 トイレに行くと言って車を下りたダイアン。 トイレから現れたのは三人の男と一緒のダイアンでした。 激しく抵抗するスティーヴ。複雑な表情のカイラ。 最良と思った決断でしたが、ダイアンは深く苦しむのでした。 スティーヴは法に基づき施設で治療の道へ。 やがてカイラも夫の転勤で街を去ることになります。 ひとり残されたダイアン・・・ ダイアンの胸にはずっと「Mammy」のペンダントが・・・ 切っても切れない母と息子の絆を象徴しているかのように 光っているのでした。 どの判断が正しいか、それは誰にもわからないことです。 母の愛だけで保護し続けることに未来はないということも確か。 それは「希望の選択」だったというダイアンに 母の強さと普遍の愛を見たような気がしました。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 原題:Mommy 製作年:2014年 製作国:カナダ 監督:グザビエ・ドラン 製作:ナンシー・グラン、グザビエ・ドラン 脚本:グザビエ・ドラン 出演:アンヌ・ドルヴァル/ダイアン アントワーヌ・オリヴィエ・ピロン/スティーヴ スザンヌ・クレマン/カイラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ☆ ☆ ☆ ランキングの応援に駆けつけてくれた ブログ「猫日和。キルト日和。」でおなじみのふーくん。 ふーくんバナーをクリックすると きっとあなたにもいいことが・・・ 応援ありがとうございます。
by ishikoro-b
| 2015-06-29 00:12
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