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兵庫県立横尾救急病院展・横尾忠則現代美術館

新型コロナウィルス関連のテレビ番組を見るたびに
見えない恐怖がじわじわ迫って来るようで暗い気持ちになります。
早く収束して、普通にお花見が楽しめる春になるといいですね。

兵庫県立美術館でゴッホを観た後、緩やかな坂道をブラブラ歩いて約30分
横尾忠則現代美術館を訪ねました。
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私が20代の半ばくらいでしたか「なぜぼくはここにいるのか」という
横尾さんのエッセイ集に夢中になり、彼の考え方に興味を持ちました。
今も大切に残している一冊です。
グラフィック・デザイナー時代の横尾作品は印刷物でしか知りませんが
絵から放たれるパワーをどう受け止めていいか正直、キャパオーバーでした。
しかし画家宣言の後、2000年から始まった「Y字路」のシリーズが
きっかけで横尾さんの作品をもう一度ちゃんと観たいと思っていたのです。
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下調べなく訪れた美術館の企画は「兵庫県立横尾救急病院展」でした。
ゴッホの後、横尾さんの作品は疲れるかしらと思いきや
何の違和感もなく自然に「横尾忠則の宇宙」へ入って行けたのも
ゴッホが「永遠の入り口」を開けてくれたからかもしれません。
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病院展のポスターをよく見ると糸杉が描かれているし
Y字路の道も黄色だし、Y字路の左奥にはミレーの種まく人のシルエットも。
横尾さんはきっとゴッホが好きなんですね。

館内を病院に見立てたユニークな企画でスタッフはみな白衣姿でした。
作品の解説はカルテ仕様で所見欄に。
入場券は診察券になっていて病院嫌いな私も今ではすっかり
横尾救急病院の患者です。
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まずは小児科:記憶装置としての肉体から

未熟児として生まれ虚弱体質だった横尾少年。
過保護に育てられるも暇さえあれば野山や川で遊び回っていたそうです。
その記憶が横尾作品の重要なインスピレーションの源。
体験によって記憶されたものこそ霊感を与え続けてくれると
横尾さんは語ります。

作品の解説はカルテの所見欄に記載されていたものからの引用です。

作品名「1945年、夏」
広島・長崎に原爆が投下され、日本が敗戦を迎えた1945年。
小鮒獲りに夢中だった少年は国民学校三年生でした。
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作品名「懐かしい霊魂の会合」
幼稚園の運動会で養父と一緒にアイスクリームを食べた記憶に基づく作品。
左には神戸の震災の光景が、上部には宇宙空間が広がり
白黒の肖像写真のコラージュが死者の霊魂を表現していました。
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作品名「Double Y-Junction」 
「Y字路」シリーズが誕生するきっかけとなった西脇市の椿坂Y字路。
後方から眺めると右側にもう一つの分かれ道が存在するのだそうです。
ここではその光景が二連画となっていました。
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「壁に耳あり障子に目あり」のことわざよろしく
空中に目が、家の壁には耳が書き込まれています。
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「なぜぼくはここにいるのか」の表紙の原画「SHOE」がありました。
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作品名「たま、帰っておいで」シリーズより
亡き愛猫たまを偲んで描き続けられたシリーズのうちの5点。
2017年の入院中に描かれており画面には漢方薬の袋など
入院生活の記録がコラージュされています。
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作品名「日野原重明の肖像」
元聖路加国際病院名誉院長だった日野原先生とは直接の面識は
ないものの多くの著者を通して自らの「主治医」と定めていたそうです。
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横尾さんの病歴を読むと、よくぞここまでご無事で、と思ってしまいますが
今もお元気にご活躍なのも、幾多の霊魂に守られているからなのでしょう。
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美術館を出て電車の最寄り駅までの景色が全部、横尾作品の中に
迷い込んだかようにシュールに見えました。
前衛的なのに仏教の世界のようで、最後に頭に浮かんだのは
「色即是空」という言葉でした。

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by ishikoro-b | 2020-03-02 01:13 | 日々是好日 | Comments(0)
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